社会福祉法人天心会 小阪病院について教えてください。
小阪病院は、大阪府東大阪市にある精神科病院です。最寄りの駅から徒歩5分というアクセスの良さもあり、東大阪市はもちろんのこと隣接する大阪市、また奈良県など多くの地域から患者様がお越しになります。小阪病院は537床の精神科病床を有し、精神科急性期治療病棟・認知症治療病棟を始めとした9つの病棟がそれぞれの機能や役割を持ち、患者様の病状・治療方針に合った医療を提供しています。
小阪病院が所属している社会福祉法人天心会には、小阪病院以外に救護施設・訪問看護ステーション・地域生活支援センター・特別養護老人ホーム・グループホーム・ケアホームがあり、患者様や利用者様の生活の質の向上のためそれぞれの機関が連携・協働して支援にあたっています。
具体的にどのようなお仕事なんでしょうか
精神病院における精神保健福祉士の仕事は、一言で言うと「患者様が、自ら希望する人生により近づくことが出来るよう、生活環境を調整するお手伝いをしたり一緒に問題を解決する方法を見つけて行く」仕事かなと思います。
そこには患者様に直接関わる方法もあれば、医者や看護師を始めとした病院スタッフとの連携、関係機関との連携、そして患者様のご家族への関わりという間接的な方法で患者様へ支援することも含まれます。入院されている患者様に入院中の医療費に使える助成制度をご案内したり、治療に対する患者様やご家族の想いを受け止め安心して入院治療を受けて頂ける環境作りをすることも大切な仕事の1つです。また、退院を目指す患者様には具体的な生活設計を立て、退院後の住まい探しを一緒に行ったり、退院後に支援を受ける関係機関との連絡調整などを行います。外来通院の患者様には、社会の中でより良く暮らすために、お金のやりくりや仕事や施設への通所などの日中活動、周りの人との接し方などについてもご相談を受け、具体的な制度やサービスをご案内したり、解決方法を一緒に考えています。現在はまだ精神科の治療を受けていない方の、ご本人やご家族・関係機関の方達からの受診相談、入院相談についても対応しています。治療を受けるべきか、治療を受けてほしいがどのようにすれば良いのか、など精神科治療の入り口に立ち治療や入院の必要性の有無、より良い対応方法についての相談に乗っています。
精神科以外の疾病を抱える患者様も少なくありませんので、他科の治療も必要な場合は総合病院等に受診依頼を行うのも私達の役割です。
仕事内容が多岐にわたる、大変なお仕事なんですね。どうしてこの仕事を選んだんでしょうか?
私は大学の3期生なのですが、私たちの学年から「精神保健福祉士」の資格取得を目指すコースができたんです。今は「社会福祉士」と「精神保健福祉士」の両方の資格を取ることが可能なようですが、私たちの頃はどちらかしか取れなかったので、2回生の終わりにコースを選択せねばなりませんでした。
どちらに進もうか迷っているときに、たまたま地元で「精神障害者の理解を深める講座」が開かれるのを知り、参加しました。福祉系の大学に進学しておきながら、精神障害を持つ方のお話を直接伺うのはその時が初めてだったのです。自分が今まで全く知らなかった精神障害者福祉の現実、そして障害を持ちながらもこんなにいきいきと地域で生活している人たちが居ること、その人たちの支援者として「精神保健福祉士」の人たちが活躍しておられること、それらの事実を目の当たりにして、感動なのか衝撃なのか、とにかく何か胸に強く訴えかけてくるものがありました。当事者の方のお話を聞いた日は、帰り道で涙が出たことを覚えています。
その講座が終わる頃には「精神保健福祉士になる」と決め、実習や国家試験を経て無事卒業と同時に精神保健福祉士の資格を取得し、最初は精神科クリニックへ就職しました。5年間勤めた後に今の職場へ転職したのですが、大学生の頃に抱いた「精神障害を持つ人と共に歩み、みんなが元気で笑って暮せる社会を作る!」というテーマはずっと変わりませんね。デッカイこと言ってしまいましたけど(笑)
今回の取材は、桑原さんとご一緒に行っていますが、学生の頃からのお知り合いだったんでしょうか。
桑原さんとは、実は学生時代から交流がありまして、私が大学2回生で桑原さんが4回生の時に「英会話」という授業で出逢ったんですね。現在はすでに退官されている先生のもと、最初は何と生徒3人。そして1人が途中で抜けてしまい、最終的には先生と桑原さん、私の3人が残ったのです。3人なので授業も授業っぽくなく研究室でお茶を飲みながら。そして3人でご飯を食べに行ったりととても楽しい経験をさせてもらいました。桑原さんとは学年も違うし、「英会話」の授業を修了してからはなかなかお会いする機会も無かったのですが、今こうして同僚として仕事が出来ていることに縁を感じますね。
桑原さんと職場は同じ訳ですが、お仕事も一緒に行うのでしょうか?
仕事は、別ですね。基本的には患者様一人に対して私たち精神保健福祉士も一人です。
なので、行っている仕事の内容も少しずつ違います。私が50人患者様をみて桑原さんが50人患者様をみれば、それだけで、100通りの治療方法、100通りの仕事内容があるという訳です。
お仕事される中で苦労したこと、またやりがいを感じるところを教えてください。
苦労、と具体的に考えると難しいですね。問題をたくさん抱えておられる方、例えばお金も無くて家も追い出されて、病気の状態も思わしくない、という方がいらっしゃったとして、確かにたくさん考えなくてはいけない課題があるのですが、それが私達の仕事なので苦労とはちょっと違うかなと思います。人の人生そのものに関わっていますので、患者様と一緒に苦労したり、悩んだりするのは当たり前のことだと思います。
大変だな、と思うのは仕事にスピードが要求されることでしょうか。私達の病院では、効果的な治療を提供して1日でも早く日常生活に戻って頂くということを目標にしていますので、私達の仕事にも同様に迅速な対応が求められます。入院中の患者様への対応、退院された患者様で継続的にご相談に来られる方への対応。それに加えて新たな患者様が入院して来られる環境ですので、待ったなしであることは確かです。その点に関しては、桑原さんは素晴らしい能力を持っておられて、私の数倍の仕事量をこなしてらっしゃると思います。桑原さんは短期間で治療を行うことを目的とする急性期治療病棟を担当されており、それだけスピードを要求されるのですが、冷静に対応し、仕事量を全く感じさせない落ち着いた姿勢は見ていてすごいなぁと思います。私なんかいつもあくせくしていて、到底桑原さんのようにはなれないだろうなと思っています。
やりがい、というのも難しいですね。月並みですけど、苦労して一緒に悩んだり時間をかけ話し合いを続けた入院患者様が、晴れて退院されるときはやっぱりとても嬉しいです。そして、そのように退院された方や、自分が関わった方が元気で地域生活を過ごしておられる姿を見ることはとても励みになりますし、患者様やご家族の方から「野嶋さん!お陰様で元気にやってますよ!」と声をかけてもらうと嬉しいです。
あとは医師や看護師、関係機関の方達と色々なことを話し合いながら仕事を進めて行くことにもやりがいを感じます。みな患者様の希望やより良い生活設計のために、知恵を出し合い意見をし合って、1つの方向に向かって進んで行こうとしているので、自分も意見を持ち、患者様や関わる全ての人たちが希望を持って同じ方向に向かえるようコミュニケーションを大切にしようと心がけています。
私達の仕事には『繋ぐ力』みたいなものが必要だ、とも思います。患者様と支援を繋ぐことはもちろん、関係者を繋ぐこと、医療を受ける側と提供する側を繋ぐこと、患者様とご家族を繋ぐこと。挙げるときりが無いですね。上手く繋がったり、自分が繋いだ結果が良い方向に出るととても嬉しいですね。
学生時代の勉強や経験で役に立っていることを教えてください。
「大学時代のあの経験が役に立ってるな」と日常的に思うことはあまり無いのですが、やはりゼミでの活動でしょうか。3・4回生遠塚谷先生のゼミに所属し、精神保健福祉についての学びを深めたのですが、その学びや他のゼミ生とのコミュニケーション、ゼミのテーマについて議論する力、また自分の考えをまとめる技術、目標に向かって諦めない気持ちを培わせてもらいました。
先生には、卒業してから立ち上げた研究会にスーパーバイザーとしてずっと参加して頂いており、現在でも公私に渡ってお世話になりっぱなしです。
また、私は大学でサークル活動などに全く参加していなかったのですが、大学時代に出逢った友人達とは現在も交流があり、一生ものの大切な友達を得られたことも私の人生にとって貴重な出来事です。また、恩師といえる先生に出逢えたことも誇りに思っています。
あと、これは学生時代の話ではありませんが、私たちが卒業した頃は福科大卒の人と現場で出会うことは少なかったのですが、最近は福科大卒の人が現場で活躍されている姿にあちこちで出逢うことがあり、とても嬉しいです。
最後に、今後の夢や目標がありましたら教えてください。
最初にも言いましたが、「みんなが元気で笑って暮らせる社会」を作ることが私の夢です。まるで政治家の謳い文句みたいですが、大それたことをしようとしているのではなく、まずは自分の目の前の仕事に真摯に取り組み、併せて精神障がいを持つ人が暮らすこの社会が抱える問題について考えて行きたいです。
「みんなが元気で笑って暮らせる社会」こそ、ひいては精神障がいを持つ人にとっても生きやすい社会だと思うので。大それた文言になりましたが、仕事に対してはもちろんのこと自分を取り巻く社会に対しても常に興味と希望を忘れず、人との出逢いや繋がりを大切にしながら一歩一歩進んで行きたいです。








